左官の歴史
2024/12/16
今回のブログは左官の歴史についてです📜
左官とは、建物の壁や床、土塀などを鏝を使って塗り仕上げる仕事で、その専門職を指します。
「しゃかん」とも呼ばれ、2020年には「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、その中に「左官(日本壁)」も含まれました。
左官技能士という国家資格もありますが、業務独占資格ではないため、資格がなくても従事できます。
また、名前に「官」と付きますが、これは歴史的な背景から来ているもので、警察官や自衛官などとは違い公務員ではありません。
「左官」があるなら「右官」は...?
昔は右官もいたそうです。
左官は土関係の仕事、右官は木関係の仕事をする人で区別されていたそうです。
江戸時代から右官は棟梁と呼ばれるようになり、右官という呼び名は消えたそうです。
※諸説あり
日本の湿気対策に欠かせない土壁と漆喰
日本は雨が多い気候で、特に湿気の調整が重要です。
伝統的な日本建築では、湿気を調整するために土壁と漆喰を組み合わせて使うことがよくあります。
日本家屋の壁は、竹を使った格子状の小舞下地に藁を混ぜた土を塗り重ねた土壁と、消石灰や麻などの繊維、糊で作った漆喰を使うのが用いられます。
これらの仕上げを行う左官職人は、技術を芸術的なレベルに昇華させ、土蔵の外壁やこて絵を手掛ける職人もいました。
洋風建築の登場と左官技術の発展
明治時代以降、洋風建築が登場すると、左官の技術は日本建築にとどまらず、ラスや煉瓦、コンクリートにモルタルを塗る技術へと広がり、さまざまな建物に活躍の場を見出しました。
昭和30〜40年代の高度経済成長期には、鉄筋コンクリート(RC構造)で作られる建物が増え、それに伴い、左官職人の需要も急増しました。
当時は戸建住宅の内壁も綿壁や繊維壁の塗り壁仕上げが多く、浴室のタイル貼りやコンクリート打設、基礎工事など、仕事内容が多様化しました。
しかし、時代が進むにつれ住宅様式が変化し、建設工期が短縮されると、左官が使う土や漆喰、モルタルなどは乾燥や硬化に時間がかかるため、壁の仕上げには塗装やクロスが増え、サイディングパネルや石膏ボードといった乾式化が進みました。
また、ビルやマンションでは、コンクリートにモルタルを厚く塗る工法が減り、プレキャストコンクリート工法の普及などが影響し、左官工事は急速に減少し、職人も減っていきました。
最近では、漆喰や珪藻土、土などの天然素材を使った壁仕上げが見直されています。
手作業による仕上げは、独特の味わいや温かみがあり、「和モダン」と呼ばれる日本らしさと欧米のモダンスタイルを融合させた建築には、特に左官仕上げが多く使われています。
左官職人は、大きく分けて住宅や寺社工事をする町場と、ビルやマンションの箱物や公共工事をする丁場に分かれます。
また、近年では床仕上げを専門とする職人も登場し、床下地のモルタル仕上げや床のコンクリート直仕上げなど、活躍の場が広がっています。
左官の技術は、時代とともに進化し、現代の建築においてもその重要性が見直されています。これからも、左官職人の手仕事が日本の建築文化に欠かせない役割を果たし続けることでしょう。